【Skill UP】ぬか漬け おと家



福岡市中央区地行。閑静な住宅街が広がるその街に、連日客足の絶えない話題のお店がある。ぬか漬けを専門とした人気店「おと家」だ。京都の町家を思わせる外観に上品さを感じつつ、真っ白な暖簾をくぐった先には、様々な種類のぬか漬けが整然と並び、その色鮮やかさに目を奪われる。

「若者がつくる、新しいぬか漬け文化」をモットーに「おと家」を営むのは、23歳の若きオーナー林音初さんである。ぬか漬けという江戸時代から花開いた文化を、伝統として引き継ぎながら新たな形へと昇華させる役割を担っている。

本日は、「おと家」オーナーである林音初さんをお招きし「おと家」をオープンしたきっかけやおと家流美味しいぬか漬けの作り方についてお話しいただいた。



ぬか漬け専門店である「おと家」をオープンした背景には、父、勉さんの道半ばに幕を降ろさざるを得なかった未完の夢が深く関わっている。

勉さんは2009年に「ぬか漬けダイニング おと家」を中央区薬院に開店し、ぬか漬けを提供する居酒屋を営んでいた過去がある。勉さんにとって念願の開業であったものの、時代はリーマンショックを引きずり、振るわない客足に悪戦苦闘する日々であった。家族を抱えながら店舗運営を行う厳しさや、回復する見込みのない市況に対して、とうとう勉さんは閉店という決断を下したのであった。

「またいつか、おと家を再興したい」

そんな父の未完の夢を幼い頃から耳にし続けた音初さんは、いつしか父のために「おと家」を開店させるんだという目標を持つようになっていく。

2020年コロナウイルス蔓延によって、音初さんの通う大学もオンライン授業が大半を占め、外出する機会も減少し自宅で勉学に励むようになっていく。しかし、その一方で自分自身や家族と向き合う時間は増えていき、父の夢の続き、そして自分自身への挑戦としての「おと家再興」の気持ちが強くなっていったのであった。

2021年、音初さんが大学3年生の頃に、念願であった「おと家」をオープンさせた。父、勉さんが営んでいた飲食店という形態ではなく、ぬか漬けを専門的に扱う製造業として、新しいコンセプトを持ち「おと家」は再出発に至ったのであった。



ぬか漬けというと「独特なぬかの匂いが苦手」という方もいるのではないだろうか。ぬか漬けに苦手意識を持っている人ほど「おと家」のぬか漬けを一度は食していただきたい。色鮮やかな野菜たちには、嫌な匂いはなく、口に入れてみるとすっきりとした山椒の風味が広がる、ご飯にもお酒にも合う至極のアテだ。

ぬか漬けをつくるにあたって、味の決め手になってくるのが「ぬか床」だ。おと家のぬか床は林家が代々受け継いできたぬか床であり、100年ほどの歴史がある。100年も続くぬか床を家庭で作るのは大変そうという声も聞こえてきそうだが、作り方はいたってシンプルである。

ぬか床に使用するのは、米ぬかに加えて「塩」「唐辛子」「実山椒」の3種類だけだ。それぞれには、菌の繁殖を抑えたり防虫効果が期待でき、ぬか床を安定させることで、長期間美味しいぬか漬けを楽しめることができる。

また、漬け込む野菜にも「おと家」ならではの工夫がある。一般的には、野菜を水洗いし水分を拭き取ったあとにぬか床に漬けていくが、そのやり方をすると、サイズも種類も違う野菜では、出来上がる時間に差が出てしまう。そこで「おと家」では野菜の下処理を変えることで、種類が違っても同時に美味しいぬか漬けが出来上がるように工夫をしている。そんな野菜の下処理の一部を紹介する。



詳しくは、おと家店舗に足を運ぶか、岩田屋本店本館7階 学IWATAYAレセプションにて不定期に開催されている「おと家のぬか漬け教室」に参加してほしい。







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