NPO法人 でんでん虫の会

でんでん虫の会とは

会員と笑顔で言葉を交わす吉松理事長

「ひとり暮らしをされている“社会的弱者”と言われる元野宿者、高齢者、障がい者、DV被害者などへの安否確認や相談活動を通じて孤立を防ぎ、社会参加や相互交流の機会をつくりながら、人と人とのつながりや絆を深め、安心して暮らすことのできる地域づくりに寄与すること」を目的として2011年に設立された。
熊本県内にて活動しており、熊本市中央区の市民活動センター「あいぽーと」で毎週水曜日の午後2時から「おしゃべり会」を定期開催している。


2008年頃でしょうか、世の中ではリーマンショックの影響で経済も大きく落ち込んでいました。熊本県でもその影響は色濃く、家や仕事を失った路上生活者も目に見えて増えていきました。

そんなときに、吉松氏(現理事長)たちは教会のシスターがおこなっている、路上生活者におにぎりを配るボランティアに参加し、多くの路上生活者との交流をはかってきたんです。

2010年に一人の50代の路上生活者と出会い、路上からの脱却のために住む場所の支援を行いました。しかし、数年後に警察から連絡が入り急いで男性のアパートへ向かうと、同居していた愛犬とともに彼は亡くなってしまっていたんです。

「路上生活から脱却して住む場所も確保できたのに…つらいことがあったなら、相談してくれればよかったのに…」と悲しさと悔しさが込み上げてきました。そして、なぜ男性は亡くなってしまったのかを知るために、彼の知人や仲間に聞いて回ると「支援されるばかりではそれが重荷になって、これ以上迷惑をかけちゃだめだと思ってしまう。本当は助けが必要なのに、我慢をしてしまうんです」そんな答えが返ってきました。そこで、ある答えにたどりついたんです。

『支援する側とされる側』という明確な線がある関係では、支援されるだけという本人にとっては重荷に感じ、助けてほしいときに声を上げることができない。だったら、支援される人も「おはよう」という挨拶から始まる日常の空間を作ることが最優先なんではないだろうか…そうすれば、支援するされるという関係はなくなり、お互いに支え合う関係を作ることができる!

そんな想いをもって、2011年にでんでん虫の会は設立されました。

でんでん虫の歌歌詞
おしゃべり会ルポ

梅﨑理事長もみらいあん設立前に視察し「こんな団体にしたい!」と思うほどの魅力溢れた「NPO法人 でんでん虫の会」が主催するおしゃべり会に参加してきました。

場所は熊本市中央区にある「あいぽーと」
路面電車にゆられ「交通局前」で下車すると目の前にある大きな施設で開催されていました。会のスタートは午後2時からというのに、1時すぎからぞくぞくと会員さんが訪れています。理事の方々もひとりひとりと挨拶を交わしながら近況報告に耳を傾け、まるで夏休み明けに久しぶりに再会した友人同士のように笑顔で会話をしている光景が印象的でした。

気づけば会場には20名以上の会員さんが椅子に座り、会のスタートをまちわびています。連絡事項が終わったあとに、吉松理事長の軽快なおしゃべりとともに「歌声ひろば」がスタートしました。

「さすらい(小林旭)」からはじまり「夏の思い出」「雨ふり」「てるてる坊主」…と各々が画面に表示される歌詞をみながら楽しそうに歌っています。大きな声で歌う人、小さな声で口ずさむ人、歌わずにリズムを体で取る人…様々な楽しみ方をしています。おしゃべり会では、話したい人は話せばいいし、話したくない人は無理に話す必要はありません。歌に関しても同じです。歌いたい人が歌い、歌いたくない人は耳を傾けるだけで問題ありません。この場所は、みんなが居心地の良い場所である必要があります。だから、強制することはないんですね。

ひとりひとりが笑顔で、こんなにも楽しそうな場所があるのかと思ったのと同時に、ここに参加している方々は、皆もともとは孤独や孤立を感じた人であったのだと考えさせられました。

「支える」のではなく「支え合う」

この考え方に、でんでん虫の会の本質があるように感じます。生活保護で経済的に安定し、住まいを確保して生活基盤をつくる。そうすれば、皆が孤立から脱却できる…そう考えていた。しかし、そうではないことに気づき「支え合う」こと「居場所」を作ることの重要性を認識したのでしょう。

吉松氏が信仰するキリスト教、イエスの言葉を借りるのであれば「隣人を愛せよ」そんな思想が「でんでん虫の会」として形になったものなのかもしれません。



次回は【Toitoitoi:ガンバ李α】