【定例会】アロンジ合同会社ほか



4月4日みらいあん事務所にて定例会が行われた。毎月の例会では今後開催予定のイベントや団体としての取り組みなどについて、様々な専門分野を持った会員たちと協議し課題解決を図る場になっている

本日は3名講師にお越しいただき自身の事業や将来の展望についてお話いただいた。
1)アロンジ合同会社 代表:近藤貴盛
2)NPO法人Beautiful World 小野一馬
3)株式会社レグザーク 統括管理者:大鶴あい



【アロンジ合同会社 代表:近藤貴盛】


新年度を迎え、新たな事業計画のもとでチャレンジを行う企業も多いのではないだろうか。そんな挑戦に対して大きな支えとなってくれる制度が「補助金・助成金」だ。1年間に募集される補助金・助成金の数は3000を超えており、対象とされる分野も多岐に渡る。制度を利用することで事業が得られる恩恵は大きいが、問題点もある。本日は、アロンジ合同会社の近藤氏に「補助金・助成金」についてのお話を伺った。

 〜補助金申請の壁〜

近藤氏は東京大学大学院を卒業後に、教育関連企業やIT企業副代表を経て国家予算の執行管理を行う独立行政法人で勤務した経験を持つ。年間15億円ほどの執行業務を担当し、公的資金の使用に伴う厳格なプロセスを、実務者という立場から経験し多くのノウハウを蓄積してきた。長年にわたって社会的有用性をシビアに見極めてきた確かな目は、現在の「補助金・助成金申請アドバイザー」としての仕事にも活きている。

中小企業にとって補助金・助成金の制度は事業の推進力を増大するための心強い支援である。しかし、その源泉は「税金」であるため採択されるためには、いくつもの難題をクリアする必要があると近藤氏は語る。最初にして最大の壁は、「募集要領」だろう。補助金によっては、数百ページにも及ぶ募集要領は、専門家であっても細部まで理解することは難しい。それを一般の人が理解し、不備なく申請書類に落とし込むことは限りなく不可能に近いのだ。しかしながら、その難題をクリアしなければ採択への門は開かれることはない。

補助金を採択されれば、社会課題に大いに貢献できる事業であったとしても、形式上の不備があれば採択されることはない。それは、採択する側の立場に立って考えれば納得できるだろう。限られた人員の中で、1日数百、数千もの申請書が事務局に上がってくる。申請内容を隅から隅まで読み込んでいく余裕などなく、効率的に審査を行うためには書類を形式上で振り分ける必要があるのだ。

 〜内部コスト削減策〜

このように、形式上に不備がなく且つ募集要領に準じた内容で申請を行う必要があり、それを一般企業の従業員が行うとなると、想像しただけでハードルの高さを感じてしまう。様々な補助金制度はあるが、高額な支援を受けることができる補助金の場合は求められる申請内容も細かく、数字に対しても相応の根拠が求められることが多い。申請業務に専従者を常時配置できる企業も少なく、手探り状態からの補助金申請となるケースがほとんどだ。

専門家に依頼をすることなく社内で申請書を制作した場合、数万字にわたる募集要領を読み込み、必要と思われる書類を用意し、決められた形式で書類作成を行う。提出後も不備があれば、修正し再提出を繰り返す。一連の作業には、膨大な内部コストが発生してしまうのである。申請にかかる膨大な内部コストを削減するためには、専門家への依頼が最適だ。社内で5時間も10時間もかかる作業を、専門家に依頼すれば5分で終わることもある。総じて、補助金申請は専門家に依頼した方がコストが安価に抑えられることは多いのだ。

とはいえ、少額な補助金に対しての申請は専門家に依頼せずに、社内で完結したいという方もいるだろう。そういった方に向けて、補助金・助成金の採択率を上げる申請のコツを5つお話いただいた――。




【NPO法人Beautiful World:小野一馬】


2022年2月24日未明に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻は、未だに多くの犠牲者を伴いながら終結の兆しをみせない。そんな侵攻当初から、国や自治体よりも早くウクライナ避難民の受け入れに奔走していた団体をご存知だろうか。NPO法人Beautiful Worldの小野氏は、妻のヤーナ氏とともにウクライナ支援に尽力してきた。今回は、ウクライナ避難民の受け入れに奔走した日々や、これからの課題についてお話いただいた。

 〜ウクライナ支援への決意〜

ウクライナ侵攻が始まる前まで、日本人の多くはウクライナという国をどの程度知っていただろうか。おそらく、認知している人の多くは「チェルノブイリ原発」程度ではないだろうか。しかし、小野氏は18歳の頃からウクライナとの関係が始まり、今では第2の故郷と呼べる存在になっている。それは、別府市にある大学で出会った現在の妻、ヤーナ氏の存在があったからだ。彼女はキエフ出身であり、小野氏も幾度となくキエフを訪れては彼女の両親や親戚との交流を深めてきた。彼女の大好きな場所に一緒に行ったり、街のシンボルでもある中央公園にはたくさんの思い出があると語る。

しかし、2020年2月に思い出の溢れた街は一夜にして破壊されてしまったのだ。夕飯を買いに行ったスーパーや、二人で腰掛けて将来を語った公園のベンチも、すべてが瓦礫の一部となってしまった。キエフの街が攻撃される様子を報道で目にした際には「言葉にできない負の感情が体の芯から湧き上がってくることに気づいた」と小野氏は語る。

しかし、怒りや悲しみの感情に飲み込まれていては何も前に進まない。自分たちのできることを全力で行い、ウクライナ、キエフの人々を救いたいという思いが募っていった。そして、3月2日に岸田首相の会見が行われ、ウクライナからの避難民を受け入れるという声明が発表されたのだ。その声明と同時に、小野氏はすぐに行動に移すことになる。キエフに住むヤーナ氏の親戚や知人に連絡し、日本に避難したいという人々のリストを作成することをお願いしたのであった。

 〜手探りの支援活動の末に…〜

数日後には、10名の避難希望者のリストが出来上がる。そのリストを片手に、北九州市や福岡市の役所に向かい、避難民の受け入れについてお願いをして回ったのだ。しかし、断り続けられる結果となる。それは、岸田首相の声明が発表されただけで、行政機関に具体的な指針は何一つ降りてきてなかったことが要因だ。そのため、避難民の受け入れについてはどの行政機関でも「国の指針が出てからの対応」という回答をされるだけであった。

しかし、諦めるわけにはいかない。こうしている間にもウクライナの人々は命の危機にさらされているのだ。電話を片手に九州内の行政機関に連絡を入れては断られる日々が続くのである。すがるような思いで、妻と出会った大分県別府市の市役所に連絡を入れたときであった、小野氏の話しを聞き、担当者は緊急会議を開くことを決定したのだ。そして、数時間後に「別府市はウクライナ避難民の受け入れを決定しました」と返答を受けたのである。諦めない心と人々を救うという覚悟は、希望の門をこじ開けたのだった。

受け入れ先を確保できたことにホッとしたのもつかの間、資金の確保、移送の手配、ビザの申請など様々な問題が立ちふさがったが、ときには私財を現金化して資金を用意し、多方面に頭を下げ苦難を乗り切ってきたのだ。そして、ロシアの侵攻開始からわずか49日後の4月13日、様々な壁を乗り越え、ウクライナからの避難民1人目の来日にこぎつけたのである。

小野氏はウクライナ侵攻が始まる前から、避難民の受け入れに従事してきた経験があったわけではない。当然、潤沢な資金があったわけでもない。第二の故郷であるキエフ、ウクライナの人々を救いたいという思いが小野氏をつき動かし、その願いが結実した瞬間でもあった。

 〜終わらない支援…〜

しかし、日本に避難できたからこの先もずっと安心というわけではない。将来のことを考えると、これからが避難民にとっても正念場になると小野氏は語る。最初のウクライナ避難民を受け入れてから、今年で2年が経過した。日本財団の生活費支援も来年の6月には期限を迎える。避難民たちが、これから先も日本で生きていくためには、自立した生活を営む必要があるのだ。小野氏はそのための支援も欠かさない。自動車免許の資格取得から、就業先の企業へのマッチングなど、彼ら彼女たちが日本社会に馴染み、自立した生活をするまでは小野氏の支援は続いていくのである。



【株式会社レグザーク 統括管理者:大鶴あい】


高齢化や少子化をはじめ日本において社会課題とされるものは数多い。数多ある社会課題の中、今回は障がい者という分野に目線を落としてみる。厚生労働省が発表している「令和5年度 障害者白書」によると「身体障害児・者」は436万人、「知的障害児・者」は109.4万人、「精神障害者」は614.8万人。年々、増え続ける障がい者に国を挙げて継続した支援を続けているものの、目を見張るような効果は出ていないのが現状だ。今回は、そんな困難を極める障がい者問題に対して、真っ向から立ち向かっている、㈱レザーアーク統括管理者の大鶴氏をお招きし、活動への苦労やこれからの思いを語っていただいた。

 〜㈱レグザークとは〜

㈱レグザークは、障がい者グループホーム運営を主業務として2017年に加藤代表によって創業された。代表の加藤氏はファイナンシャルプランナーとして、長年にわたって様々な家庭でのライフプランや資産形成を支援してきた過去を持つ。その中で、障がい者を抱える家庭のプランニングをすることも数多くあった。その度に、ファイナンシャルプランナーとしての範囲でしか支援ができないということに、もどかしさを覚えていたのだ。「もっと、障がい者を中心においた支援をしたい」という自身の思いに気づき、ファイナンシャルプランナーの道を捨て、障がい者グループホームの事業に身を投じたのである。

加藤代表の「想い」は、㈱レグザークで働く人々へと伝播し、7年の月日を経て現在ではグループホーム30棟、140名の障がい者たちを支援する企業となった。創業当初から事業へ参画している大鶴氏も、そんな「想い」を継承する一人である。

 〜グループホーム開設への壁〜

現在では30棟のグループホームを運営する企業となった㈱レグザークではあるが、障がい者グループホーム運営には困難も多い

「この土地にグループホームを開設したら、たくさんの人の支援ができる」という思いがあったとしても、開設するには至らないケースも多いのだ。立地の良い物件を見つけ、不動産やオーナーとの契約に至ったとしても、近隣住民からの反対があれば辞めざるを得ない。「これまで何十軒も諦めてきました」と大鶴氏は語る。障がい者施設特有の問題でもあるのかもしれない。そのため、大鶴氏は開設の検討段階で、近隣の住宅を一軒一軒訪問し、障がい者施設への理解を求める活動を行っている。ときには、辛辣な言葉で批判されることもあるが、仕事への誇りと自社の活動が社会へ与える価値を信じて壁を乗り越えてきたのだ。

 〜グループホームの担う役割〜

障がい者を取り巻く環境として「8050問題」も無視できない。老障介護という言葉もあるが、障がい者を介助する両親も高齢となり、親の亡き後子どもたちはどう生きていくのかという壁に直面しているのだ。8050問題を解決するためにも、グループホームの担う役割は大きいと大鶴氏は語る。

グループホームでは親元から離れ、ひとつ屋根の下で様々な人々と生活を送る。両親や兄弟としか触れ合わない限定された環境から大きく前進し、自立への一歩目となるのだ。生活の中には、自立するために必要な学びがあふれている。障がい者との生活を通して、一つ一つを丁寧に教え教育することで、少しずつかもしれないが前進し、最終的には自立への門が開かれるのだ。

「障がい者をただ受け入れ、時間まで預かるというのが私達の仕事ではない。社会に貢献できる人間に育てていくことが、私たちの使命だ」と大鶴氏は語った。



次回は【Skill UP】