【Skill UP】社会福祉士 岡本氏

みらいあんでは、終活・相続に関しての様々な相談を日々受け付けております。終活や相続に関する内容を取り扱うため、相談者は65歳以上の高齢者が多くを占めています。

65歳は高齢者なのでしょうか?私が幼少期に感じていた65歳とは随分様相が違って、現代の65歳の方々はとても若々しく感じます。しかしながら、社会構造的には彼ら彼女らは高齢者という区分になってしまうんですね…。

日本では1970年に「高齢化社会」をむかえ、2007年には「超高齢化社会」に突入しました。今後も高齢者の増加はますます加速し、2060年には国民の40%は高齢者の時代になっていきます。そんな時代において、わたしたちみらいあんは「高齢者」についての理解をますます深めていく必要があると感じています。


今回は、高齢者にとっても高齢の両親を持つ子どもたちにとっても大きな課題となってくる「認知症」について学んでいきます。本日は福岡市社会福祉協議会の専門員でもあり、全国で「認知症サポーター」の養成を行っているキャラバン・メイトでもある岡本正孝さんを迎えて「認知症サポーター」養成講座を実施いただきました。



認知症サポーターとは…

認知症サポーターだからといって、街中でみかけた高齢者に自分からどんどんと向かって行って「わたしは認知症サポーターだからお手伝いしますよ!」と言わなければいけないというわけではありません。

認知症サポーターは、なにか特別なことをやる人ではないんです。認知症という病気を正しく理解して、偏見を持たず、認知症を患う当人や介護している家族を見守る地域の「応援者」として自分のできる範囲で活動していただければいいんです。

目の見えない人が「白杖」を持つように、足の悪い人が「杖」を使うように、認知症の人々にとって、認知症サポーターの方々にはその人ができない部分を補う「人間杖」となってほしいと思っています。

認知症とは…

様々な要因で、脳の神経細胞が破壊されてしまったり働きが悪くなることで、見たり聞いたり歩いたりできるにも関わらず、物事を正しく認識したり正しく行えなくなる脳の病気です。

皆さんにまず知っていただきたいのは、認知症は「病気」ということなんです。その病気を正しく理解していただくことで、認知症患者に対して適切な対応ができるようになってきます。

2020年のデータでは日本全国で認知症と診断された高齢者の数は約600万人にのぼります。その割合は65歳以上の約5.4人に1人であり、今後も2025年には5人に1人、2040年には4人に1人、2060年には3人に1人という予測がされています。

近い将来、日本において認知症は「国民病」となってしまうでしょう。データから見れば「わたしや両親は大丈夫!」とは言えません。

認知症は誰しもが患うものなんだと認識することが、認知症を自分ごととして考え正しく理解できるスタートラインなんです。

認知症の症状とは…

認知症患者に現れる症状には「中核症状」「行動・心理症状(BPSD)」があります。

脳の細胞が壊れることで直接的に出てくる症状のことを「中核症状」と言います。中核症状は認知症を患った多くの人に起こる症状であり、根本的な治療をすることは難しい領域になります。薬などで進行を遅らせることが現在できる最善の療法です。「中核症状」には【記憶障害・見当識障害・理解/判断力の障害・実行機能障害】などがあります。新しい情報を記憶できなかったり、時間や場所がわからなくなるなど、認知症として典型的な症状が発生します。

「行動・心理症状(BPSD)」は、認知症患者の元来持っている性格や現在の環境、心理状態が絡み合うことで現れる症状になります。具体的には【うつ状態・幻覚/妄想・暴力・徘徊・不潔行為】などです。「中核症状」は治療することは難しいですが「行動・心理症状(BPSD)」に関しては、介護者や家族が接し方を変えることで治る可能性がある領域です。

介護者にとって認知症患者からの暴言や徘徊、妄想、不潔行為などは介護負担が大きく、イライラや不安を募らせることになります。しかし、その多くは「行動・心理症状(BPSD)」にあたるため、認知症を正しく理解し認知症患者へ正しく接することで改善される可能性があるのです。

介護者に対して…

認知症は脳の病気です。問題行動をとるようになったからといって、認知症の方を叱って責めて罵倒したところで現状は何も変わりません。認知症の人は自分自身を変えることができないのだから、まずは自分自身が変わるしかないんです。

とは言っても、認知症の介護をしている方は「いつも同じ話を聞かされたり」「どこに行くかわからないから目を話すことができなかったり」「誰にも相談できなかったり」「ありがとうを言われることもなかったり」と、大変なことの連続でいつの間にか心が疲れ切ってしまいます。そんなときは、誰かに相談してみましょう。

福岡には「認知症の人と家族の会」というものがあります。そこで同じ悩みを抱えた人々と痛みや辛さを分かち合うことができます。また、介護サービスも大いに利用していただき、ご自身の人生と親の介護のバランスをとっていくことが重要です。一人で抱え込んでいては、必ず潰れてしまいます。

認知症サポーターも「認知症の当事者」だけを支援するのではなく、認知症の方を介護している家族に対しても支えとなる「杖」になる必要があります。

認知症サポーターに望むこと…

認知症になったとしても、安心して暮らせる地域であることを実現するために「認知症サポーター」となった方々には、家族はもとより地域の高齢者への関心を高めてもらいたいです。

街中で困っている方がいれば「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけてあげたり、迷っている方がいたら「少しココに座ってお茶でも一緒に飲みましょうか?」と話を聞いてあげたり、そういった小さな行動が少しずつ広がり、大きなうねりに変化していき、ひいては「認知症」に関わらず誰しもが住みやすいまちづくりに繋がっていくのだと思います。



現在、福岡市には160万人の人々が生活していますが、認知症サポーターとしての登録者数は約13万人。約8%の人しか認知症サポーターとして認定されていないのが現状です。

認知症への理解と支援を大きな潮流にしていくには、もっと多くの方々へ認知症のことを知ってもらう必要があります。「認知症サポーター養成講座」は10名以上のグループであれば開催することができますので、地域や会社、それぞれのコミュニティで受講いただきたいと思います。




次回は【終活セミナー②】